東京かわら版の創刊号を見る
2015-06-06


 演芸専門誌『東京かわら版』が今月号で創刊第500号を迎えました。今や、東京及びその近辺で落語・講談・浪曲などの演芸を趣味とする人々には手放せないこの冊子。聞くところによると芸人さんの中にも、このかわら版の情報欄をみて自分のスケジュールを確認する方がいるとか。
 さて、『東京かわら版』の創刊号、第一号が刊行されたのが1974(昭和49)年11月のこと。わずか8ページの冊子だったと聞きます。例によって私のマニアの虫が疼きまして、どんなものだか見てみたい。ということでいつものように、国会図書館へ赴き創刊号のコピーを入手してきました。
 1ページ目は「年中行事・催物等」というページ。都内での神社の祭礼やどこの博物館・美術館でどういう催しがあるという情報が掲載されています。ボリュームとしては不十分でまだまだ手探りの状態でした。2ページ目から6ページ目まで、この冊子の8分の5を占めていたのがなんと映画情報。いまや演芸専門誌として確固たる地位を占めている『東京かわら版』は、創刊時は実は映画の情報を主とした雑誌だったのです。創刊号発刊の2年前の1972(昭和47)年7月には雑誌『ぴあ』が創刊されていますので、この『ぴあ』の影響を強く受けたのではないでしょうか。当時の社名は『(有)東京月間情報社』で、この社名が当初の方向性をよく示していると思います。
 7ページ目はスポーツの情報欄、そして8ページ目が「落語会など」の情報で、演芸の情報はこの1ページきりでした。「映画」というメジャーな分野では商売として成り立たず、「演芸」という独自性のある情報にウェイトを置くようになり、そして特化していったことにこの専門雑誌の成功のカギがあったのでは。
 さて、これからの『東京かわら版』ですが、先に挙げた『ぴあ』は、ネットメディアの台頭により「情報はタダで得られるもの」という考えが一般化し、雑誌としての『ぴあ』は4年前に終刊となりました。映画などという全国規模で展開されるメジャー分野と違い、手作りの規模でやっている場合も多い「演芸」の世界だからこそ、まだまだ『東京かわら版』は重用されているのでしょう。「演芸」というささやかな楽しみには、A4サイズの3分の1程度のこの『かわら版』が良く似合います。
 以下の画像は、著作権の問題とかもありましょうが、ひっそりとお楽しみください。

禺画像]↑創刊号の第1ページ目

禺画像] ↑2ページから6ページまでは、映画の情報。現在『演芸専門誌』となっていることを考えれば意外である。

禺画像] ↑7ページ目はスポーツの情報欄

禺画像] ↑そして最終ページ、8ページにやっと「落語会等」の情報欄。演芸の情報はこれきりだった。今の冊子の厚さを考えれば隔世の感がある。

[落語]

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